「親が土地をたくさん持っているけれど、相続が起きたらどうなるの?」
「口座ってすぐに使えなくなるって聞いたけど、生活や納税は大丈夫?」
相続に直面したとき、よくご相談いただくのが「預金の引出」に関するお悩みです。
特に土地を多く所有されているご家庭では、相続税の金額が大きくなりやすく、しかも土地はすぐに現金化できません。そのため、実際にお金をどう動かすかが大きな課題になってきます。
今日は、そんな 「相続が起きたときの預金の取り扱い」 について、やさしく解説いたします。
預金はなくなった瞬間に「凍結」される
人が亡くなると、銀行はその人名義の口座を凍結します。これは、誰がどのくらい相続するか決まるまで、不公平が起きないようにするためです。
つまり、日常生活の費用や葬儀費用を払いたくても、すぐにはお金を動かせなくなってしまうのです。
土地を多くお持ちのご家庭では「不動産はあるけれど現金が動かせない」という状況に陥りやすく、これが大きな不安材料になります。
そこで活用できるのが 「預金の仮払い制度」 です。
相続人であれば、家庭裁判所を通さずに、一定の金額まで金融機関からお金を引き出すことができます。
- 計算式:口座残高 × 1/3 × 法定相続分
- ただし1つの金融機関につき 上限150万円まで
例えば3,000万円の預金があり、お子さん2人が相続人だった場合、計算上は1人500万円まで可能ですが、上限150万円が適用されます。
この制度を使えば、葬儀費用や急な支払いにはある程度対応できます。
それでも資産家には足りないことが多い
ただし、土地をたくさんお持ちの方の相続となると、相続税の金額は数百万円、時には数千万円に及ぶこともあります。
仮払いの150万円では到底足りず、納税資金や生活費をどう準備するかが大きな課題になります。
しかも、不動産は分けにくいため、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)が長引き、預金が正式に解凍されるまで時間がかかるケースも少なくありません。
どうしてもお金が必要な場合には、家庭裁判所に「遺産分割前の払戻し請求」を申し立てることができます。
葬儀費用や相続税の納付など、必要性が認められれば預金を引き出せますが、裁判所の手続きを経るため、時間や手間がかかることもあります。
やっぱり事前の準備が一番安心
相続が起きてから「どうしよう」と慌てても、できることには限りがあります。
だからこそ、生前からの準備がとても大切です。
| ・遺言書を作成しておく | 誰が何を相続するか決めておけば、手続きがスムーズに進みます。 |
| ・生命保険を活用する | 受取人固有の財産になるため、口座凍結の影響を受けず、すぐに現金を受け取れます。納税資金の確保にも有効です。 |
| ・資産の組み換えを検討する | 不動産が多すぎる場合は、一部を売却して現金化したり、収益性のある資産に替えておくのも安心です。 |
| ・納税資金のシミュレーション | あらかじめ相続税額を試算し、現金で対応できるよう備えておくことが大切です。 |
土地をたくさん持っている方の相続では、預金が凍結されてしまうことが大きなリスクになります。
「仮払い制度」や「裁判所の払戻し請求」で一時的に対応することはできますが、納税や生活費には十分ではないことが多いのが実情です。
だからこそ、元気なうちに準備をしておくこと が何より大切です。
「うちのケースだとどう備えたらいいのかな?」と少しでも気になった方は、ぜひ私たちにご相談ください。
一人ひとりの状況に合わせて、安心できる相続対策をご一緒に考えていきましょう。



