相続税の納税資金が足りないとき 「物納」や「延納」はなぜ認められにくいのか?

「父が亡くなり、相続税の申告を進めているのですが……。うちは土地はたくさんありますが、現金がほとんどありません。
相続税を一括で払うのはとても無理なので、延納や物納を使いたいと思っているのですが、実際どうなんでしょうか?」

こうしたご相談を、当事務所でもたびたびお受けします。

地主さんや不動産オーナーの方にとって、相続税は大きな負担です。
土地の評価額は高く出るのに、手元の現金は少なく、「払いたくても払えない」という状況に直面される方は少なくありません。

そこで「延納」「物納」という制度を耳にして、救いの手があるのでは、と考える方が多いのです。
しかし実際には、これらの制度は申請しても認められないケースが非常に多いのが現実です。

今回はその理由を、できるだけわかりやすくご説明します。

延納や物納は「特別な救済制度」

まず大前提として、税金は原則として現金で一括納付しなければならない、というルールがあります。

延納や物納はあくまで“例外”であり、「どうしても現金で払えない場合」に限って認められる仕組みです。
最初から「延納や物納を使えばいいや」と思っていても、現実には門前払いされてしまうのです。

税務署の視点:「本当に払えないのか?」を厳しくチェック

延納や物納を申請すると、税務署は徹底的に調べます。
ポイントは「本当に現金で納められないのか?」という点です。

チェックされる例

  • 被相続人や相続人の預金通帳
  • 株式・投資信託などの金融資産
  • 相続した不動産の売却可能性
  • 銀行や親族から借りられるかどうか

❝やれることを全部やっても、なお払えない❞と証明できなければ、延納や物納は認められません。

よくある認められない理由

手元の預金があるとみなされる

生活費や事業資金として残しておきたい預金でも、税務署からは「納税に使える」と判断されてしまいます。
「このお金は必要だから残したい」という個人的な事情は考慮されにくいのです。

土地の一部を売却できると判断される

「土地ばかりで現金がない」と訴えても、もし土地の一部を分筆して売れる余地があれば「売って納税してください」となります。
物納は「最後の最後の手段」であり、売却できるなら物納は認められません。

借入で対応できると見られる

銀行融資や親族からの借入が可能と判断されれば、「まずは借りて納税してください」と指摘されます。
「借りたくない」という理由は通用しません。

なぜここまで厳しいのでしょうか?

理由は大きく分けると3つあります。

1.金銭納付が大原則だから
税収を安定させるには現金が一番確実です。

2.物納は国にとって負担が大きいから
土地や株式を受け取ると、管理や処分にコストがかかります。国としてはできれば避けたいのです。

3.抜け道を防ぐため
もし簡単に物納が認められると「お金があってもあえて現金化せず物納する」という人が出てきてしまいます。あくまで原則は現金一括納付。そのため審査は非常に厳格です。

地主さんや不動産オーナーができる対応策とは

「そうは言っても現金がないのに、、、じゃあいったいどうすればいいの?」という声が聞こえてきそうです。
実務的に考えられる対策は以下の通りです。

  • 生前贈与を活用して、相続の前に少しずつ財産を移転しておく
  • 売却できそうな不動産をあらかじめ検討しておき、一部の不動産を売却して、納税用の資金を作っておく
  • 生命保険を利用して、相続発生時に現金を受け取れる仕組みを用意する
  • 相続発生後は金融機関と早めに相談し、短期融資を検討する

「延納や物納に頼らなくても済む準備」がとても重要なのです。

税務署側は、手元預金や売却可能な土地、借入の可能性まで徹底的に調べ、本当に現金での納付が難しいのかを検討します。

あくまで相続税は原則「現金一括納付」であり、延納・物納は簡単には認められない、ということをしっかりと理解したうえで、納税資金の準備を生前から対策しておくことが不可欠です。

「延納や物納があるから安心」というのは危険な誤解です。
本当に困ったときの最後の救済でしかありません。

地主さんや不動産オーナーの方は、ぜひ早めに専門家へご相談いただき、納税資金をどのように確保するか、具体的なプランを立てておくことをおすすめします。

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