「相続の話、そろそろした方がいいんだろうけど……」
そう思いながら、今日も切り出せずにいませんか。
親の老後や相続の話題は、正論で分かっていても感情が邪魔をするテーマです。
「お金目当てだと思われたらどうしよう」
「まだ元気なのに、死の話なんて縁起でもない」
「兄弟姉妹との関係がぎくしゃくしそう」
実は、相続トラブルの多くは「制度」ではなく、生前の会話不足から生まれています。
今回は、相続を専門に扱う現場視点から、親子で無理なく、自然に相続の話を始めるための“会話術”をお伝えします。

なぜ相続の話は、こんなにも切り出しづらいのか
まず押さえておきたいのは、相続の話が重くなる理由です。
それは、この話題が
- お金
- 老い
- 死 という、日本人が避けがちな3要素を同時に含んでいるからです。
特に親世代は、「子どもに心配をかけたくない」「自分の財産を詮索されたくない」という思いを抱きがちです。
一方、子ども世代は、「自分が欲張っているように見えないか」「親の気分を害さないか」と遠慮してしまう。
結果として、誰も悪くないのに、誰も話さない。これが相続問題のスタート地点です。
会話術①「相続」ではなく「もしも」の話から始める
いきなり「相続の話なんだけど…」と切り出す必要はありません。
おすすめなのは、ニュースや身近な出来事をきっかけにする方法です。
例えば、
- 「知り合いの家で、相続でもめたらしいよ」
- 「テレビで“相続トラブル特集”やってた」
- 「友達が親の入院で大変だったみたい」
こうした話題の流れで、「もし○○だったら、どうするつもり?」と仮定の話に持っていく。
ここで大切なのは、答えを求めないことです。
「考えてないなぁ」「まだ先の話だろ」そう言われたら、深追いはしません。
会話の目的は、答えを引き出すことではなく、“話題に慣れてもらう”ことなのです。
会話術② 主語は「私」にする
相続の話がこじれる最大の原因は、「あなたはどうするの?」という聞き方です。
これは親にとって、責められているように聞こえます。
代わりに使ってほしいのが、「私」を主語にした言い方です。
✕「ちゃんと準備してるの?」
〇「私、いざという時に何も分からないと不安で…」
✕「兄弟で揉めたくないからさ」
〇「私たちが困らないように、少しでも知っておけたら安心かなって」
主語を「私」に変えるだけで、会話は詰問から相談に変わります。
会話術③ 「財産の額」より「想い」を聞く
相続の話=財産の金額、と思っていませんか。実は、最初に聞くべきは“想い”です。
例えば、
- 「この家、どうしたいと思ってる?」
- 「大事にしてきたものって何かある?」
- 「もしもの時、誰に何を伝えたい?」
親世代は、「お金の話はしたくないけど、気持ちは聞いてほしい」と思っていることが多いのです。
想いを聞くことで、
- 親は「理解してもらえた」と感じ
- 子は「方向性」を知ることができる
ここが一致すると、具体的な相続の話は驚くほどスムーズになります。
会話術④ 一度で終わらせようとしない
相続の話は、一発勝負ではありません。
むしろ、「今日はここまで話せた」という小さな積み重ねが成功のカギです。
今日は「どんな財産があるか。」次は「誰に相談しているか。」また別の日に「遺言は考えているか」というように、少しずつ、時間をかける。
「ちゃんと話せていない=失敗」ではありません。話し続けられていること自体が、成功なのです。
それでも話せないときの“最後の一手”
どうしても直接話せない場合、
- 相続の本を「たまたま置いておく」
- セミナーや相談会の案内を共有する
- 第三者(税理士・司法書士)の名前を出す というワンクッションも有効です。
「私が不安だから、一緒に聞いてみない?」この一言は、親のプライドを傷つけにくい魔法の言葉です。
相続の話は「親のため」であり「家族のため」
相続の話をすることは、親の死を待つことでも、財産を狙うことでもありません。
それは、親の想いをきちんと受け取り、家族を守る行為です。
「話しておいてよかった」相続の現場では、そう言える家族と、「聞いておけばよかった」と後悔する家族の差は、生前の“たった一度の会話”だったりします。
今日この記事を読んだことが、その一歩になることを願っています。



