税務調査の最前線―調査官と税理士、その静かな攻防戦

相続税調査の裏側を、調査官と税理士の両視点から読み解いてみましょう

インタビュー①税務調査官が語る「相続税調査」という名の“謎解き”

― 税務調査というと、書類の確認がメインというイメージがありますが、実際にはどのような調査が行われているのでしょうか?

調査は、単に書類をチェックするものではありません。むしろ、故人の人生そのものを読み解く“謎解き”に近いんです。申告書を手がかりに、「本当にすべての財産が申告されているのか?」という事実を掘り起こしていくプロセスですね。

― 具体的にはどんなことを見ているのでしょうか?

まずは申告書を徹底的に精査します。例えば、名寄帳から漏れている不動産はないか、過去の申告書と照らし合わせて預金の増え方に違和感はないか。

とくに、「名義預金」は重要なチェックポイントです。

孫名義の通帳に故人の給料が振り込まれていたり、家族の口座に大金が移動していたり、という形跡は見逃せません。

― 調査時、相続人の方とはどのように接しているのですか?

基本的には、穏やかに世間話から入ります。

でもその会話の中で、ちょっとした言葉の矛盾や動揺は見逃しません。

「おじいちゃんは貯金が苦手で…」と言いながら、家に高級な骨董品があったりすると。「これは…?」と踏み込んでいくわけです。

インタビュー②税理士が語る「調査官との言葉の戦場」

― 調査の連絡を受けたら、税理士としてはどのように動くのですか?

まず、依頼人に再ヒアリングを行います。

すると、申告書作成時には語られなかった“現実”が出てくることもあるんです。「実はタンスに現金(タンス預金)が…」「名義は子供だけど、管理は私が…」といった話ですね。それを受けて、事前にすべてのリスクを洗い出し、防御態勢を整えます。

― 調査当日は、どのような役割を果たすのですか?

一言でいえば、「防御の盾」です。

調査官は巧みに感情に揺さぶりをかけてきます。「この預金はお母様がコツコツ貯めたんですね?」と優しい口調で聞かれても、裏の意図は「これは相続財産ではないんですか?」ということ。

その意図の可能性を事前に依頼人に伝え、冷静に答えられるようにしておくことが大切です。

― 現場での攻防も、かなり緊迫感があるのでは?

はい。通帳の提示を求められたら全て並べて、一円単位の入出金でも、理由を論理的に説明します。

生前贈与が争点になった場合は、贈与契約書や申告書を提出し、合法であることを証明しなければなりません。

― 最終的に、目指すとところはどこにあるのでしょうか?

目標は「申告是認」、つまり、調査の結果、申告内容に問題なしとされることです。

しかし、明らかに申告ミスがあれば、すぐに修正申告を行い、追徴課税を最小限に抑えます。私たちの役割は、法に則った適正な申告をすること。それを徹底するだけです。

相続税の税務調査は、亡き人の人生と財産を公の場で精査するという、非常にプライベートで、時に残酷なプロセスです。

しかし、その根底にあるのは、「事実に基づいた適正な納税」です。

調査官は、見えない財産を可視化するプロフェッショナルであり、税理士は、納税者の権利を守る盾として、その知識と経験を駆使します。

この静かな攻防戦の中にこそ、現代の税務行政のリアルがあるのです。

 

キーワード解説

名義預金:故人の財産を、家族など他人名義で管理している隠し口座

タンス預金:現金として自宅に保管され、申告に含まれていない財産

生前贈与:故人が生前に財産を贈与した場合、それが証明されないと相続財産とみなされることがある

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