人が亡くなるタイミングは多くの場合、家族はもちろん自分でも予測できるものではありません。
とくに、交通事故や心筋梗塞、脳卒中といった突然の死に直面すると、遺された家族は深い悲しみだけでなく、思いもよらない困難に悩まされることがあります。
その中でもとくに大きな問題となるのが、「相続財産がどこにどれだけあるのかわからない」ということです。
いざという時に困ってしまうことのないよう、事前に対策できることを考えてみましょう。
そもそも相続財産とは?
相続財産とは一般的には以下のようなものがあります。
●土地・建物などの不動産
●預貯金
●株式などの有価証券
●動産(貴金属、美術品など)
●生命保険金
●死亡退職金 など
それぞれにおいて問題点を整理してみましょう。
【不動産】
所在地や境界が不明な土地
自宅のみを所有している場合は問題が少ないですが、複数の土地を持つ地主や先祖代々の土地を保有している場合、問題が複雑になります。
実際に、相続財産の対象となった土地についてご家族にお伺いすると、正確な場所や面積を知っていたのは故人のみで、相続人には情報が伝わっていなかったというケースが多々あります。
土地の境界が不明確な場合は、隣地所有者との話し合いや合意文書の確認が必要になりますし、山林の場合は、曖昧な目印による境界も多いため、調査が困難です。
土地の貸し出しに関するトラブル
土地を他者に貸している場合、土地賃貸契約書の所在が重要になりますが、先祖の代からご近所の人に貸し続けている土地などは賃貸契約書は作成していないことも多く、契約書は交わしていても紛失していたり、面積の記載が曖昧だと相続人が困ることになります。
登記名義が古いままのトラブル
登記上の所有者が祖父母のままでそのまま放置されているケースも多く見受けられます。
その場合、相続人全員で遺産分割協議書を作成し、改めて名義変更が必要となります。
また、相続の際に登記変更をしないまま放置され、相続人関係がより複雑になってしまっていることから誰も管理をする人がいなくなり、荒れ放題の空き家となってしまう、空き家問題が深刻化しているため、2024年より相続登記が義務化されました。
3年以内に手続きを行わないと10万円以下の過料が科される可能性がありますので、相続の際は登記変更を忘れないようにしましょう。
登記上の「住所の不一致」などの細かな不備も多くみられ、修正には多くの手間がかかります。
土地や建物の不動産に関する書類は、生前のうちに正しい登記情報に整えておくことが、家族への最大の思いやりといえます。
【預貯金】
金融機関に残高証明を依頼すれば預金の把握は可能ですが、名義が家族のものだった場合は、その預金が故人のものか家族のものかを明確にしなければなりません。
預金口座は、故人が亡くなったことを銀行が把握した時点で即時に凍結される恐れもありますので、どの口座から何の引き落としがされているのかを把握しておくことも見落としがちですが重要です。
また、ネット銀行の場合は、ログイン情報が分からず、口座の存在自体を把握できないこともあります。タンス預金についても本人しか知らない場所に大金が隠されていたら大問題です。
どの銀行に口座を所有しているかだけでもご家族には共有しておいた方が安心かもしれません。
【生命保険】
保険金については、保険証券を紛失している場合でも、生命保険契約照会制度を利用すれば調査可能です。
ただし、契約者が家族名義であっても、実際の保険料負担が故人だった場合、その保険契約の扱いが複雑になります。
税法上では、契約者=保険料負担者とはならないため、注意が必要です。
相続財産を巡るトラブルを防ぐには?
これらのトラブルを防ぐには、大きく分けてたった2つしかありません。
①故人となる本人が「終活ノート」などに財産の所在を記録しておく
②将来の相続人とあらかじめ話し合い、財産情報を共有しておく
もし、家族では話しづらいという場合は、我々のような相続の専門家に相談することも一つの有効な選択肢です。
後々のトラブルを防ぐためにも、早めの備えをおすすめします。
今すぐやるべき5つのチェックリスト
1.不動産の登録名義を確認(祖父母名義のまま放置されていませんか?)
2.預金口座・ネット銀行・タンス預金の一覧を整理
3.保険証書や契約情報の所在を明確に(照会制度も活用)
4.土地を貸している場合の契約書類を再確認
5.「終活ノート」に財産・連絡先・パスワードを記録(家族と共有が望ましい)
あなたの「万が一」は、家族にとっての「突然」です。
突然に備え、今できる準備をしておくことこそが最大の愛情です。
今すぐにご家族で話し合いができるという場合でも、相続やお金に関することはとてもデリケートな問題です。
お互いへの思いやりを決して忘れず、話し合ってみてください。