「うちは仲がいいから大丈夫」ほど、危ない
相続の話になると、よくこんな言葉を耳にします。
「うちは家族仲がいいので、揉めることはないと思います」
「エンディングノートも書いているし、問題ないですよね?」
しかし、相続の現場を数多く見てきて、はっきり言えることがあります。
争続は、仲が悪い家より“普通の家”で起きています。
原因は感情でも性格でもありません。財産が“見えていない”こと、ただそれだけです。

エンディングノートでは、なぜ争続は防げないのか
誤解してほしくないのですが、エンディングノート自体が悪いわけではありません。
・気持ちが伝わる
・想いを残せる
・家族の安心につながる これらは確かに大切です。
ただし、相続の現場ではこうなります。
「気持ちは分かった。でも、結局いくらあるの?」
「その土地って誰の名義?」
「借金は?保証は?」
想いは共有できても、判断材料が足りない。
これが、争続の入り口です。
争続を防ぐ本質は「財産の見える化」
争続を防ぐ家には、共通点があります。
それは、生前から財産が整理され、誰が見ても分かる状態になっていること。
ポイントは3つだけです。
整理①「何を持っているか」を正確に見える化する
まず最初に必要なのは財産の全体像を“事実ベース”で把握することです。
・土地は何筆あるのか
・どこにあるのか
・名義は誰か
・預金口座はいくつあるか
・有価証券、保険、貸付金は?
ここでよくあるのが、「だいたい分かっているつもり」という状態。
これは一番危険です。
相続が始まると、「知らなかった財産」「聞いていない話」が次々に出てきます。
その瞬間から、家族の空気は変わります。
不信感は、知らなかった事実から生まれる。
これを防ぐのが、最初の“見える化”です。
整理②「評価と負担」を見える化する
次に重要なのは、それぞれの財産が“どれくらいの価値で、どんな負担を生むのか”を整理することです。
・この土地はいくらくらいの評価か
・相続税はいくらかかりそうか
・維持費、固定資産税はいくらか
・売れるのか、売れないのか
ここを整理せずに相続を迎えると、必ずこうなります。
「え、こんなに税金かかるの?」 「この土地、もらっても大変じゃない?」
価値と負担を知らずに分ける相続は、必ず不満を生みます。
見える化とは、「高い・安い」ではなく、“引き継ぐ覚悟が必要なものか”を共有することです。
整理③「どう分けるつもりか」を見える化する
最後が、最も大切で、最も避けられがちな整理です。
「この財産を、どう分けるつもりなのか」
・誰に何を引き継いでほしいのか
・なぜそう考えているのか
・平等なのか、公平なのか
これを言葉にしないまま相続を迎えると、残された家族は“推測”で判断することになります。
「長男だから当然?」「面倒を見てたから多くて当然?」
推測は、必ずズレます。ズレは、感情の衝突になります。
完璧な答えでなくていいのです。
考えを“見える形”で残すことが、争続を防ぎます。
見える化は「家族への思いやり」
財産の見える化というと、事務的で冷たい印象を持たれるかもしれません。
でも実際は逆です。
・子どもを迷わせない
・疑わせない
・責任を押し付けない これは、家族への最大の思いやりです。
エンディングノートに想いを書く前に、まずは財産を整理する。
争続を防ぐ家が、最初にやっていること
争続を防ぐ家は、特別なことをしていません。
- 財産を把握し
- 価値と負担を整理し
- 分け方の考えを示している ただそれだけです。
もし今、「まだ元気だから」「そのうち考える」と思っているなら、それは最も多くの争続を生んできた言葉かもしれません。
財産の見える化は、亡くなる準備ではありません。
家族が困らないための準備です。
気づいた“今”が、一番早いタイミングです。



