相続した実家を売却して納税資金に充てたい!できるだけ多くのお金を残すには?

相続税は現金納付が原則です。

しかし、実際は、土地や家屋などの不動産ばかりで現金が手元になく困っている、という方は数多くいらっしゃいます。

今回は、実際にご相談いただいた事例をもとに、相続税の納税資金の確保の仕方の1つをご紹介しましょう。

登場人物

  • 相談者: 田中さん(仮名)(60歳)
    令和7年3月に父が他界。財産総額3億円、相続人は本人1人。相続税9180万円。
  • 専門家: 税理士・相続コンサルタント 境内

相続後の現状

田中さん:
父が亡くなり、相続税の申告を進めています。
相続財産は、

  • 自宅の土地建物:8,000万円
  • 預金:5,000万円
  • 父の会社株式:1億7,000万円

の合計3億円です。
相続税が9,180万円ほどかかる見込みで、納税資金を確保するため、父の自宅を売却しようと考えています。
ただ、どうすれば一番お金が残るのか、売却のタイミングや税金の仕組みがよくわかりません。

売却で発生する税金の基本

境内:
相続した土地建物を売却すると、「譲渡所得税」が発生します。
譲渡所得は次のように計算します。

譲渡所得 = 売却価額 -(取得費 + 譲渡費用)

相続した不動産の場合、「取得費」は亡くなったお父さまの購入時の取得価格を引き継ぐのが原則です。
しかし、古い不動産では購入時の資料が残っていないことも多く、その場合は「概算取得費(売却額の5%)」で計算されます。
これだと実際より取得費が非常に低くなってしまい、課税される利益が大きくなりがちなんですね。

「相続税額の取得費加算」とは?

田中さん:
なるほど。ただ、相続税を9,000万円近くも払うのに、さらに譲渡税を取られるのはつらいです…。
何か軽減できる方法はないんでしょうか?

境内:
あります。それが「相続税額の取得費加算(租税特別措置法第39条)」です。
簡単に言えば、「相続で払った相続税のうち、売った財産に対応する部分を取得費に加算できる」という制度です。

適用できる条件

境内:
この制度を使える条件は主に次の3つです。

  1. 相続または遺贈で取得した財産であること
  2. その財産を、
    「相続の開始日の翌日から3年10か月以内」に譲渡していること
  3. 相続税を実際に納付していること

田中さんの場合、令和7年3月に相続が発生していますから、売却期限は令和11年1月末日頃までです。
この期間内に売却すれば、取得費加算の適用が可能です。

どれくらい加算できるのか

田中さん:
では、実際にどれくらい加算できるんですか?

境内:
それは「相続税のうち、売却した財産に対応する部分」です。
つまり、売却する不動産の評価額が、相続財産全体の中でどの割合を占めているかで決まります。

たとえば、今回のケースでは、

  • 相続財産総額:3億円
  • 自宅土地建物:8,000万円(全体の約26.7%)
  • 納付した相続税:9,180万円

この26.7%を掛けると、
約2,450万円(=9,180万円×26.7%)が加算できる見込みです。
これを「取得費」として扱えるわけです。

売却益の計算に反映すると…

境内:
たとえば、仮にこの自宅を8,000万円で売却したとします。

  • 売却価額:8,000万円
  • 取得費(概算5%):400万円
  • 譲渡費用(仲介手数料など):200万円
  • 相続税額の取得費加算:2,450万円

合計取得費は、
400万円+200万円+2,450万円=約3,050万円

したがって、

譲渡所得=8,000万円-3,050万円=4,950万円

この4,950万円が課税対象です。

長期譲渡(相続による取得から通算して5年超の場合)であれば、税率は所得税15%+住民税5%=合計20%程度。

つまり、約990万円程度の譲渡税で済む見込みです。

⑦ 3000万円特別控除との併用は?

田中さん:
「居住用財産の3,000万円特別控除」は使えないんですか?

境内:
良い質問です。
実は、相続した自宅を売った場合でも、
被相続人居住用財産の3,000万円特別控除(措法35③)が使える可能性があります。

ただし、次の条件を満たす必要があります。

  • 亡くなったお父さまが一人で住んでいた家
  • 相続後、空き家のままになっており、
    売却前に取り壊すか、耐震改修をしてから売る
  • 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡

田中さんのケースでは、父の自宅を取り壊して更地で売却すれば、この「空き家特例」も適用できる可能性があります。

つまり、
相続税額の取得費加算3,000万円控除の両方を組み合わせることもできるのです。
(※同一部分の重複控除は不可ですが、順序調整で最大限有利に。)

実際の納税資金シミュレーション

境内:
もし、

  • 売却額:8,000万円
  • 譲渡所得:4,950万円
  • 特別控除:3,000万円
    とすると、課税所得は1,950万円です。

20%の税率で約390万円の譲渡税。
つまり、
8,000万円-390万円=約7,610万円が手取りになります。

この資金で相続税9,180万円のうちの大部分を賄うことが可能ですね。

売却のタイミングと注意点

田中さん:
だいぶ希望が見えてきました。
いつ売るのがいいですか?

境内:
ポイントは2つです。

 👆期限内(令和11年1月末頃まで)に売ること。
→ これを過ぎると取得費加算が使えません。

 👆売却時の譲渡形態を慎重に。
→ 「更地で売るか」「家付きで売るか」によって空き家特例の可否が変わります。

また、売却前に一度税理士に「概算譲渡税シミュレーション」を依頼して、実際にいくら残るかを試算しておくのが理想です。

まとめ

境内:
今回の田中さんのように、相続した自宅を売却して納税資金をつくる場合、「相続税額の取得費加算」と「空き家3,000万円控除」を組み合わせると、
譲渡税を数百万円単位で軽減できる可能性があります。

この2つの制度を適切に活用できれば、同じ8,000万円で売っても、
「手取り」が500万円以上変わることもあります。

相続不動産を売るときは、
「いつ売るか」「どの制度を組み合わせるか」で結果がまったく違う――
それを理解して動くことが、最終的に“より多くのお金を残す”最善の方法なのです。

ポイント

  • 相続税額の取得費加算は、相続発生後3年10か月以内の譲渡が条件。
  • 加算額は「相続税×当該財産の評価割合」で計算。
  • 空き家の3,000万円控除と併用も可能(要件に注意)。
  • 売却前に必ず税理士の試算を。

税後に手元に残る資金を最大化できます。

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