相続で「もめる家」と「もめない家」は何が違う?

~相続相談1万件以上の実績から、税務の現場で見えた“争続の法則”~

相続の相談を受けていると、ほとんど同じ財産規模でも“争う家”と“争わない家”がはっきり分かれることに気づきます。財産が多いか少ないかではありません。むしろ数千万円規模の相続こそトラブルが起きやすいという感覚すらあります。

では、何が両者を分けているのでしょうか。これまでの税務と実務の現場で見えてきた“争続の法則”を、簡潔にまとめてみたいと思います。

法則1:財産の「見える化」がある家は争わない

争いになる相続の多くで、まず出てくる言葉はこれです。

「父(母)はどれだけ持っていたかわからない」
「兄だけが通帳を管理していた」
「名義が複雑で、何が本当かわからない」

財産の全体像が不透明だと、疑心暗鬼が生まれます。
疑心暗鬼は、たとえ実害がなくても“争いの導火線”になります。

対して、もめない家がやっているのはシンプルです。

  • 預金・不動産・保険などを一覧にして家族に説明している
  • エンディングノートや財産目録を本人が作っている
  • 管理を任せている子に、親が「何をどう管理しているか」を共有している

つまり 「何があるかを家族が知っているかどうか」 だけで、相続実務の難易度は劇的に変わります。

不透明な財産=争いの種
透明な財産=納得の土台

これは例外がありません。

法則2:「長男(長女)がやって当然」という思い込みが争いを生む

相続は家族の歴史そのものです。だからこそ“古い価値観”が顔を出します。

現場で多いのは、

  • 長男が親と同居していた
  • 実家の農地を長男が継いだ
  • 家業を誰かが継いだ

こうした文脈があると、その子は「自分が多めにもらうのが当然」と考えがちです。他の兄弟姉妹はそうは思いません。ここに感情の溝ができます。

対して、もめない家はどうしているか。

  • 親が生前に「家業を継ぐ子には生前贈与や給与で報いている」
  • 一緒に暮らした子に対する寄与分を、元気なうちに話し合っている
  • 「同居=優遇」ではなく、負担や貢献を冷静に見て説明している

つまり “親の明確な言葉”があるかどうか が争いを防ぎます。

法則3:親が元気なうちに「話題にしていた家」は争わない

日本では、相続の話はタブー視されがちです。しかし、もめる家の最大の特徴はこれです。

「親が亡くなるまで、相続の話を一度もしていない」

話していないから、
“親が本当はどう思っていたのか”
“どの財産を誰に残したかったのか”が不明なままスタートします。

対して、もめない家は違います。

  • 遺言書の話を家族で一度はしている
  • 「家の土地はこの子に」「預金は平等に」と本人の意思を伝えている
  • 介護や生活費の負担を、きょうだいで話し合っている

完璧な計画でなくても構いません。
「話題になっていたかどうか」 だけで争いの芽は大きく減ります。

法則4:「遺言書+説明」がある家はほぼ争わない

遺言書があるだけでも争いは減りますが、実はそれだけでは不十分です。

現場では、遺言書があっても争うケースがあります。

なぜか?

遺言書の内容に“理由”が書いていない
なぜその割合なのかが説明されていない
本人が家族に事前に話していない

遺言の内容に納得できないと、家族は「本当に本人が書いたのか?」と疑い、争いに発展することさえあります。

対して、もめない家は次のポイントを押さえています。

  • 遺言書に「そのように分ける理由」を書く(付言事項)
  • 家族に生前に説明しておく
  • 公正証書遺言にして形式的な争点をつぶしておく

遺言書+説明 これが争続を防ぐ最強の組み合わせです。

法則5:相続税の負担を“誰が払うか”まで話している家は強い

不動産が多い家ほど、相続税の納税資金がネックになります。

  • 不動産は分けられない
  • 売らないと税金が払えない
  • 売却するときの意思決定で意見が割れる

この“お金の話”が争いの引き金です。

対して、もめない家はここまで準備しています。

  • 納税資金用の保険を用意している
  • どの不動産を誰が引き継ぐか、家族会議で共有している
  • 売却が必要な場合は、親が決めておく
  • 相続税まで見据えて遺言書を作る

相続税は“後から出てくる爆弾”になりがちです。ここに備えて、誰がどう払うのかまで話し合えている家は、本当に強いと感じます。

法則6:兄弟姉妹が“普段から連絡を取っている”かで結果が違う

意外ですが、これも極めて大きな要素です。

普段から

  • 連絡を取り合っている
  • 親の状況を共有している
  • 誕生日や年末年始に顔を合わせている

こうした家族は、最終的に「まぁ、みんなで納得できる形で」と着地します。

反対に、

  • 10年以上連絡がない
  • 親の介護状況が共有されていない
  • 一人だけが親の負担を背負っている
  • 親の死後に久々に顔を合わせたら感情が噴出した

こうした家は税務調査も含め、争いが長期化する傾向が明確にあります。

争続を避けるための5つのポイント

最後に、現場の実感として“これだけはやってほしい”という5つのポイントをまとめます。

  1. 財産を見える化する(一覧表を作る)
  2. 親の想いを家族に伝えるタイミングを作る
  3. 遺言書を作り、理由も記す
  4. 納税資金まで見据えておく(保険・売却方針)
  5. 家族が普段からコミュニケーションをとる

特別な法律知識がなくてもできることばかりです。
しかし、この5つがあるだけで、相続は驚くほど円滑になります。

相続は“財産の争い”ではなく、家族の関係性の集大成です。
財産が多い少ないではなく、準備とコミュニケーションの質が結果を左右します。

争続を避けるための第一歩は、「相続の話題をタブーにしないこと」。

専門家の立場から、親が元気なうちに一度だけでも構いませんので、ぜひ家族で話すきっかけを作っていただきたいと思います。

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