【税務調査でよくある質問】税理士が本音で答えます

税務調査で必ずと言っていいほど出てくるテーマがあります。それが

「これは昔、親からもらったもので贈与税は払っていませんが……時効ですよね?」

という質問です。

しかし、贈与の「時効」は一般の方が思われているより複雑で、単純に「昔だから大丈夫」という話にはならない 場合が多くあります。

今回は、実際に納税者の方からよくいただく質問を、インタビュー形式でお答えしていきます。

贈与と時効”

―― 質問①:そもそも、どんなものが『贈与』として認められるのですか?

民法上の贈与とは「無償で財産をあげます・もらいますという双方の合意」です。

税務の現場で典型的に“贈与と認められやすい”のは以下のようなケースです。

(1)名義変更が伴う財産

  • 預金を親→子へ移している
  • 株式の名義を親→子に変えている
  • 不動産の名義を子へ変えている

名義変更は「贈与の意思を外形的に示す」ので、争いが少ないケースです。

(2)親の預金から定期的に子の生活費・家賃などが振込まれている

金額や頻度によっては生活費の扶養義務の範囲内と認められますが、高額・継続性・本人が自由に使える 場合は贈与認定されやすくなります。

(3)親名義預金だが、実質は子が自由に使っている

これも調査で非常に多いケースです。

名義は親でも、

  • 出し入れは子の判断
  • ATMカードは子が管理
  • 親は預金の存在すら把握していない

という場合、実質は「子の財産(=贈与済み)」 と判断されることがあります。

―― 質問②:逆に“贈与と認められないもの”は何ですか?

税務上、贈与と認められにくいのは以下のようなケースです。

(1)親名義預金のまま放置 → 実質は親が管理

名義も管理も親で、子が自由に使っていない場合、生前贈与には該当せず「相続財産」 と扱われます。

(2)「もらったと言っているだけ」で証拠がない

  • 振込記録なし
  • 名義変更なし
  • 親子の合意書もなし

この場合、贈与があったと主張しても認められにくく、相続の際に相続財産に戻される(名義財産問題) ことになります。

―― 質問③:では、よく聞く“贈与税の時効”って何ですか?

税金の時効は「法定申告期限の翌日からカウント」されます。

👆贈与税の時効

  • 通常:5年
  • 重加算税(隠蔽・仮装)がある場合:7年

つまり「10年前にもらったから大丈夫」という方が多いですが、実は二つの問題が潜んでいます。

―― 質問④:贈与税が時効でも、安心できない理由があると聞いたことがあります。二つの問題とは?

最大の落とし穴はこれです。

落とし穴①:贈与税が時効でも、“相続税では課税される”

税務調査で本当に問題になるのはここです。

どういうことか?

10年前に贈与を受けていたとしても、届出も名義変更もなく、預金や財産が「親名義のまま」なら、国税側は次のように判断します。

「これは贈与ではなく、親の財産(名義財産)です」
→ 相続財産に戻して相続税を課税する

つまり、

贈与税の時効 ≠ 相続税で課税されない

ということです。

落とし穴②:贈与が“存在した証拠”がなければ、時効の主張が通らない

贈与税の時効を主張するには「そもそも贈与があった」という証明が必要 です。

しかし、よくあるケースでは

  • 証拠なし
  • 名義は親のまま
  • 親がキャッシュカードを持っていた
  • 子が勝手にATMで引き出して使っていた
  • 通帳の印鑑も親のもの

このような場合、調査官としては「贈与なんて無かったのでは?」という判断になります。

贈与がなかったなら、時効の話にすらなりません。

―― 質問⑤:では、時効にならない代表的なケースは?

次のようなパターンでは時効とは認められません。

(1)そもそも贈与が成立していない

名義も管理も親 → 相続財産扱い
時効以前の問題です。

(2)重加算税が適用されるケース

贈与を隠していた、虚偽説明をした等があれば 7年まで伸びます。

(3)相続が発生し、名義財産として問題化したケース

贈与の証拠がなく、「実は親の財産」→ 相続財産として課税
となるため、時効ではありません。

(4)形式だけ贈与に見せて実質は親の管理

調査官は実質で判断します。

  • 親が管理
  • 子が自由に使えない
  • 名義だけ子

これは「名義預金」として相続財産へ戻されます。

―― 質問⑥:では、将来トラブルにならないようにどう整理しておくべきですか?

重要なのは、次の3つのポイントです。

👆“贈与をした証拠”を残すこと

贈与は「証拠」がないと認められません。

必ず以下のどれかを残すことを推奨します。

  • 親→子への振込記録
  • 贈与契約書(簡易なものでOK)
  • 受贈者が通帳・カード・印鑑を管理している状況
  • 親がその財産を使えない状態を明確にしておく

👆名義と実態を一致させること(非常に重要)

税務署は「名義」ではなく「実態」で判断します。

  • 親名義 → 親の財産
  • 子名義 → 子が管理していれば子の財産

名義だけ変えて、実態が親の管理のままというケースはほぼ全て否認対象です。

👆定期的に家族で財産の状況を共有すること

多くのトラブルは

  • 親が勝手に名義変更
  • 子は事情を知らない
  • 相続時に「名義預金」とされる

という構図から起こります。

毎年、財産の管理状況を確認しておくことでリスクは大幅に減ります。

まとめ:最後に伝えたいポイント

  • 「昔もらったから時効」は思ったより成立しない
  • 時効以前に、そもそも“贈与が成立していない”ケースが多い
  • 証拠がなければ贈与と認められない
  • 名義だけ変えて実態が伴わないと「名義預金」になる
  • 贈与するなら証拠・名義・管理の3点セットで整えること
  • 相続のときに争われるのは「過去の贈与が本当にあったか」

「時効」は“贈与が事実として成立していること”が前提。
その証拠がなければ、時効は主張できない。

これが、税務調査で最も誤解されている部分です。

このことを十分理解したうえで、贈与を行うようにしてください。

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