地主さんたちの相続税の相談に乗っていると、正直に言ってしまえば「あ、この方は相続で相当苦労されるな」そう感じる瞬間があります。
それは財産が多いからでも、土地をたくさん持っているからでもありません。
むしろ、苦労する地主さんには、はっきりした“共通点”があるのです。
今回は、税理士として数多くの地主相続を見てきた立場から、普段はあまり表に出ない「本音」を交えながらお話しします。
これは誰かを責める話ではありません。未来の“争続”と“想定外の相続税”を防ぐための、現場からの警鐘です。

①「うちは大丈夫だよ」が口癖の地主さん
「相続税?まあ、うちはそんなに問題にならないと思うよ」
この一言を聞いた瞬間、税理士は心の中でそっと深呼吸をします。
なぜなら本当に大丈夫な地主さんほど、こういう言葉を言わないからです。
- 土地は先祖代々のもの
- 現金はあまり持っていない
- 子ども同士の仲も悪くない
一見すると問題がなさそうに見えます。しかし、実際に評価をしてみると、
- 路線価が大きく上がっている
- 貸宅地・借地権が複雑に絡んでいる
- 小規模宅地の適用要件が微妙
というケースが非常に多い。
「知らなかった」「そんなに税金がかかるとは思わなかった」
この言葉を、私たちは何度聞いてきたでしょうか。
② 現金がほとんどない地主さん
相続税で最も苦労するのは、財産が多い人ではなく、“納税資金がない人”です。
地主さんの典型的なバランスシートはこうです。
- 財産の8割以上が土地
- 現金・預金は最低限
- 借入金はそこそこある
評価額は数億円。相続税も数千万円。
しかし払うお金が、ない。
その結果、
- 泣く泣く土地を売却
- 思わぬ安値での処分
- 「売らなければよかった」と後悔
相続税は“待ってくれない税金”です。10か月以内に現金で納める必要があります。
この現実を知らずにいる地主さんを見ると、税理士として胸が痛みます。
③ 名義がぐちゃぐちゃな地主さん
「この土地、誰の名義でしたっけ?」そう聞くと、しばらく考え込まれる地主さんがいます。
- 親名義のままの土地
- 亡くなった祖父名義が残っている
- 共有名義になった経緯を誰も説明できない
この瞬間、税理士の頭の中には“争続”の二文字が浮かびます。
名義が整理されていない土地は、
- 遺産分割が進まない
- 相続人全員の同意が必要
- 感情論が一気に噴き出す
結果として、税金よりも家族関係のほうが壊れてしまうことすらあります。
④「子どもたちには任せてある」と言う地主さん
これは、税理士として最も怖い言葉です。
「子どもたちは仲がいいから」「うちは揉めないと思う」
しかし、相続が始まると状況は一変します。
- 配偶者の立場
- 嫁・婿の意見
- それぞれの生活事情
これらが一気に表面化します。
特に地主相続では、
- 誰が土地を継ぐのか
- 誰が管理するのか
- 誰が税金を負担するのか
が決まっていないと、必ずこじれます。
「任せる」と「丸投げ」は違う。
この違いを理解していない地主さんほど、相続で苦労されるのです。
⑤ 税理士や専門家に「今さら相談」する地主さん
相続直前、あるいは相続発生後に、「実は今まで何もしていなくて…」
そう言って来られる地主さんも少なくありません。
もちろん、私たちは全力で対応します。しかし正直に言えば、もっと早く相談してくれていれば、選択肢は何倍もあった。
- 生前贈与
- 不動産の組み替え
- 借入の活用
- 遺言書の作成
時間があればできた対策が、「もう手遅れ」になってしまうのです。
それでも、救われる地主さんの共通点
一方で、相続税が高額でも穏やかに、そして納得感のある相続を迎える地主さんもいます。
その共通点は、驚くほどシンプルです。
- 自分の財産を正確に把握している
- 家族と少しずつ話をしている
- 専門家を“早めに”味方につけている
相続対策とは、節税テクニックではありません。「準備する姿勢」そのものなのです。
最後に税理士として伝えたいこと
「この地主さんは相続税で苦労する」
そう感じる瞬間の裏側には、必ず“知らなかった”“考えていなかった”があります。
相続は、亡くなってから始めるものではありません。
生きているうちに、家族の未来を守る行為です。
もし、この記事を読んで、少しでも心に引っかかるものがあったなら
それは、今が動き出すタイミングなのかもしれません。



