2026年4月3日、パソコンやスマートフォンなどデジタルツールを活用した新しい遺言の形について、導入を検討する民法改正案が閣議決定されました。
時代の流れに沿って、様々な分野でデジタル化は進んでいますが、「遺言書」においてはこれまで、その特殊な性質から、なかなかデジタル化が認められていませんでした。
しかし、今回の改正案で、「保管証書遺言(デジタル遺言)」がついに閣議決定されたので、民法改正公布の日より起算して3年を超えない範囲内の日から施行される予定です。
今回は、そのデジタル遺言について、どういった内容なのか、私たちにはどういう影響があるのかを解説しましょう。

1.そもそも遺言書を遺すにはどうすればいいの?
遺言書には、現在、3つの方法があります。
1つは「自筆証書遺言」、1つは「公正証書遺言」、もう1つは「秘密証書遺言」です。
実際、利用されているものの多くは、自筆証書遺言と公正証書遺言ですが、それぞれ注意すべき点があります。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」は、財産目録など、一部パソコンの利用や通帳のコピーの添付などが認められるようになりましたが、原則として、全文手書きで自筆する必要があります。
また、パソコンを利用して作成した文書でも、各ページにそれぞれ署名押印は必要です。
作成に費用がかからず、いつでも手軽に書き直せるメリットがある一方、一定の要件を満たしていなければ無効となってしまったり、そもそも遺言書の存在自体が紛失したり、忘れ去られたりするリスクがあります。
遺言者が亡くなった後は、相続人などが家庭裁判所に遺言書を提出し、検認の手続きを行うことで、遺言書としての効力を持つようになります。
相続財産が多い方や、相続人が多い方など、記載事項がたくさんある人にとっては、そもそも全文手書きの負担は大きく、亡くなった後も家庭裁判所への手続きが必要など、手書きだからこその手軽さと大変さを兼ね備えています。
公正証書遺言
遺言書の原本は、公証役場で保管されます。
法律知識がなくても、公証人という専門家が遺言書の作成をしてくれるので、遺言書があとあと無効となってしまう可能性は極めて低く、公証役場で保管されるので、勝手に書き換えられたり、隠されるおそれもありません。
遺言者が亡くなった後も、家庭裁判所での検認の手続きは不要なので、相続人にとっても負担は少ないですが、費用や公証役場への訪問などの手間がかかってしまうことと、証人が2人必要となってくる点に注意が必要です。
2.保管証書遺言(デジタル遺言)とは?
保管証書遺言は、遺言の全文が記載または記録された証書に、遺言者が署名(電子署名も可)したうえで、遺言書保管官の前で遺言内容の全文を読み上げ、法務局で保管してもらう遺言書のことです。
証書自体は書面でもデータでも作成ができ、そのデータやプリントアウトしたものを法務局に提供します。
偽造防止や本人確認のため、法務局の職員の前で、対面で全文を読み上げる必要はありますが、職員が認めた場合のみ、Web会議での読み上げも有効とされています。
法務局への出頭の手間を削減するためにも、いずれはWeb会議の方法が主流となることも想定されています。
自筆証書遺言も公正証書遺言もどちらもある程度の手間がかかってしまいますが、その手間を現状できる限り最小限に抑えたものがデジタル遺言といえるでしょう。
3.手続きの流れ
まだ施行される前なので、あくまで現段階の改正案によればですが、次のような流れで成立することになります。
●遺言の全文が記載または記録された証書を作成する
⇓
●遺言者が、その証書に署名する(電子署名も可)
⇓
●法務局にその証書の書面かデータを提出する
⇓
●偽造防止、本人確認のため、法務局職員の前で、全文を読み上げる(場合によってはWeb上も可)
⇓
●所定の保管申請を行い、その証書を法務局に保管する
保管後は、遺言書作成者はいつでも閲覧請求ができ、また、撤回もできるものとされています。
4.実務への影響
これまで、自筆証書遺言を作成しようかなと思って、思ったより文章が長くなってしまったり、日付の記入や押印のし忘れをしたりで途中でやめてしまった方はいませんか?
遺言書を自力で作成する自信はないが、証人を連れて公証役場へ行くのも手間だなぁと思っていた方はいませんか?
遺された家族が思わぬ形で揉めてしまうことがないよう、自らの意思を生前に遺しておくことはとても大切です。
その最も有効な手段の一つが遺言書ですが、まだまだ手間や負担の多さから二の足を踏んでしまう方は多くおられます。
この民法改正案が施行され、「デジタル遺言」が実用化されれば、遺言書制度活用へのハードルが少しは下がり、より多くの方が今よりも手軽に遺言書を作成できるようになります。
自筆する必要も、無効となってしまう心配も、改ざんされたり隠されたりする不安もなく、手軽に安全に遺言書を作成できる、「デジタル遺言」。
実用化されるまではまだまだ時間はありますので、これを機会に、ぜひご自身やご家族の遺言書について一度ご検討してみてください。



