『税務調査』というと、“多額の税金逃れを画策している悪意のある納税者の元に、調査官が調査にやってくる”というイメージがありませんか?
もちろん、財産を隠し、税金逃れをしようとしているとみなされれば税務調査は入りますが、税務調査は悪意のある納税者だけを対象にしているわけではありません。
納税者本人も気づいていなかった財産や、勘違いなどからも『申告漏れ』ということは起こってしまうため、どのような税金でも、どのような人でも、税務調査の対象になりえます。
とくに、相続税においては、金額が多額になりやすいうえ、財産の元の持ち主が亡くなっているため、申告漏れの可能性が高くなりがちです。
ただ、そうはいっても税務調査の対象にはなりたいものではありませんよね。
申告の不備を防ぐためには、税務署が着目するポイントや申告漏れになりやすい典型例を理解しておくことが大切です。
今回は相続税の税務調査の仕組みと調査に備え事前にできる対策を紹介します。

相続税の税務調査とは?確認されるポイントと調査の流れ
相続税の税務調査は、申告内容が正しいかを確認するために税務署が行うものです。
調査には、原則、事前に連絡があり日時を調整して行われる「任意調査」と、事前の連絡はなく裁判所の令状に基づき抜き打ちで行われる「強制調査」の2種類があります。
相続税の税務調査の対象となりやすいのは、
●相続財産に占める現金の比率が高い場合
●生前贈与が多い場合
●不自然な預金の移動がある場合
など、申告漏れが疑われるケースです。
相続税は複雑なため申告内容に不備が生じやすいのが実情です。
税務調査において税務署が特に重視する申告漏れの典型例
・名義預金(家族名義だが実質被相続人の財産)
・亡くなる直前の預貯金の多額の引き出し
・タンス預金などの手元現金
・生前贈与(贈与の証拠がない場合は「相続財産」とみなされる)
・非課税枠を超える死亡保険金や死亡退職金
また、相続財産に不動産が含まれる場合は、不動産の評価価格によって相続税額も大きく変動するため、注意が必要です。
相続財産に不動産がある場合の注意点
・土地の評価方法(路線価・倍率方式)の適用が正しいか
・土地の形状や接道状況、私道負担などに基づく補正が適切か
・土地や建物を貸している場合の評価は適正か
・名寄帳や登記記録と申告内容に相違はないか といった点が重点的に確認されます。
なお、相続税の税務調査では、申告内容に応じて次のような書類や資料が確認されます。
・預金通帳(過去数年分) ・預貯金の取引明細
・保険契約書類・不動産の評価資料
・生前の贈与契約書やメモ書き
・家族間の資金移動の根拠となる記録
税務調査が入りやすい状況とは?事前にできる備えと注意点
相続税の税務調査は必ず行われるものではありませんが、申告内容に対して税務署が疑いや不審を抱いた場合などに実施されます。
次のようなケースでは申告に不備が生じやすく、調査が入りやすい傾向にあるといわれています。
・相続財産全体で現預金の割合が大きい場合
・生前贈与や家族間の資金移動が多い場合
・相続人間で申告内容に食い違いがある場合
・相続財産に評価が困難な不動産がある場合
・相続人が多い、疎遠な相続人がいる、相続争いの兆候がある場合
このような相続税の税務調査に対する備えとして、事前にできる対策をいくつか紹介します。
①多額の資産の出入りについては記録し、説明できるようにしておく。
②預金通帳や生命保険などの契約書、高額な領収書などの書類を保管しておく。
③贈与を行う場合は、契約書を作成し、銀行振込などで記録を残す。
④認知症などの判断能力低下のおそれがある場合は、家族の管理体制を整える。
⑤生前に財産整理(棚卸し)を行なって財産目録を作成し、家族と共有する。
⑥申告前に税理士へ相談し、申告漏れや財産評価などの誤りを防ぐ。
相続税の税務調査は、申告内容が正確であれば過度に恐れる必要はありません。
ただし、日頃から資産の動きをわかりやすく整理しておくことが、万一の際の最大の防御策となります。適切な備えを進めるようにしましょう。



